こんにちは
矯正治療と装置と聞くとどのようなイメージをお持ちになりますか?
多くの場合、歯の表面にブラケットとワイヤーの矯正装置や、最近注目されているマウスピースを使ったマウスピース矯正がイメージされると思います。
これらの治療法は、基本的に大人の歯に生え変わった方を対象とした矯正治療になります。
それでは全てが大人の歯に生え替わるまで治療を待つのでしょうか?  
お母さん方の中には「早く始めて!」といきりたつ方もいらっしゃいます。
まだ子供の歯と大人の歯が混在している 6歳〜13歳のお子さんを対象とした歯列矯正の治療法もあります。 こちらも非常に多くの装置があるのですが、そのひとつに床矯正装置と呼ばれる装置があります。


床矯正装置なんて聞いたことないという方にとっては、どのような治療法なのか不安に思われるかもしれません。 そこで今回は、床矯正装置を使った矯正治療について解説します。 これを読んでいただければ、床矯正装置を使った治療法がきっとおわかりいただけ、不安や疑問が解消されることと思います。


まずは床矯正について解説します。 床矯正とは歯の部分を取り去った入れ歯のような形をした矯正装置を使う矯正治療です。 ”床”は英語ではプレートといい、板を意味します。 コンポジットレジンというプラスチックで”床”を作り、外れないように歯に引っ掛ける金属製のワイヤーが”床”につく構造をしています。 これが基本形で、必要に応じてネジやバネが付けられます。 床矯正装置は、”入れ歯のような”と書きましたように、取り外しが自在なのが特徴です。


床矯正の目的

①顎の骨の成長をコントロールすること
②顎の骨を適度なサイズと形にすること
③永久歯がより生えてきやすくなるように歯が並ぶスペースを作ってあげる事です。


子どもの中でも、混合歯列期という乳歯の歯並びから永久歯の歯並びへと変わりつつある時期の子どもを対象としています。 つまり適応年齢は小学生くらいということになります。
そして全体的なブラケットを使った矯正治療のようにビシッと真っ直ぐな歯列になるとは期待しないでください。
あくまでもブラケットを使う治療へのツナギと理解していただけたら幸いです

床矯正の種類

床矯正にもいろいろなタイプがありますが当院で最も使っている緩徐拡大装置について説明します。

緩徐拡大装置

緩徐拡大装置は、床矯正装置の中でも代表的な装置になります。 緩徐拡大装置は、プラスチック部分が分割されていて、分割したところはネジでつながっています。 このネジを回すと、少しずつ離れる構造になっており、この働きで顎の骨の成長発育をコントロールします。まっすぐ平行に離れていくタイプのネジや、丸く扇型に離れていくタイプのネジなど、ネジの種類によって広がる方向が変わってきます。また、ネジを入れる向きによって、左右に広げたり前後に広げたりすることが可能です。ひとつの装置に複数のネジを入れたり、片方だけがひろがるようにプラスチックを調整することもできます。さらに個別に歯を押す音のできる小さなバネを入れることで、歯を一本ずつ押し出したり左右に寄せたりすることもできます。さまざまな症例に適したデザインで作ることができるので、多くの患者様にお使いいただいています。


床矯正のメリットデメリット

床矯正には数多くのメリットがあります。
床矯正で使う矯正装置は、取り外しできるように作られています。 歯に固定するタイプの矯正装置と比べると、お子様にとって取り組みやすい形状だと言えます。 取り外しが可能なので食事もしやすいという利点があります
本格的なブラケットを使った矯正装置ではしばしばみられる食べ物が矯正装置に挟まるということもありません。 食後の歯磨きも普通にしていただけます。

抜歯のリスクを減らせる

顎の骨の成長をコントロールすることで、永久歯が並ぶスペースを確保できれば、歯を抜歯することなく永久歯の歯並びをきれいに整えられる可能性が高くなります。 大人の矯正治療では顎の骨のサイズは大きくできないので、歯を並べるスペースが不足する場合は抜歯してスペースを確保しますので、床矯正ならではのメリットと言えます。

使いやすい

矯正装置と聞くと扱うのが難しそうに聞こえるかもしれません。 ところが、床矯正の矯正装置は取り扱いが簡単です。 小学生でも1人で装着することができます。

次に床矯正のデメリットをお伝えします
メリットがあるものにはデメリットがあるように、床矯正にもデメリットはあります。

年齢制限がある

床矯正は、基本的に成長途上の子どもを対象とした矯正治療法です。 成人の方には効果が少なくなってしまいます。

つけなければ効果が得られない

床矯正は取り外し式です。 取り外せるメリットは大きいのですが、反面、つけるのを忘れたり、嫌がってつけなかったりすると、矯正治療の効果が得られません。 就寝時は毎晩装着する必要があります。

無くしてしまうこともある

取り外した後、どこに置いていたか忘れてしまったり、外泊先に置き忘れてしまうなど、紛失のリスクがあります。

慣れるまでしゃべりにくい

床矯正装置は比較的サイズが大きいので、子どもさんは異物感に慣れるのも早いとはいえ、やはり慣れるまでの間はしゃべりにくいです。

まとめ

今回は、床矯正について解説しました。 床矯正は、取り外しタイプの子どもを対象とした矯正治療です。 床矯正は、顎の骨の成長発育をコントロールしたり、永久歯をきれいに並べたりすることなどを目的に行われます。 床矯正の特徴として、 ①取り外し可能 ②食事や歯磨きが自由にできる ③お手入れ簡単 などのメリットがあります。 デメリットもないわけではありませんが、床矯正の優れた特徴がお分かりいただけたのではないでしょうか。子どもの矯正治療は、大人のそれと違った専門知識が必要です。 お子さんの矯正治療を考えていらっしゃる方は、ぜひ一度ご相談ください。