「マウスピースで治せますか?」「歯を抜かずにできますか?」

アルファ矯正歯科クリニックの初診相談でも、よくいただく質問です。インターネットで調べ、具体的な治療方法を思い描いてから来院される方も多くいらっしゃいます。

ただ、初めてお会いしたその場で、すぐに答えられるとは限りません。同じように前歯が重なっていても、原因やあごの形、歯を支える組織の状態、患者さんが望む変化は一人ひとり違うからです。

私たちは、まずお話を伺い、必要な検査をして治療の目標を考えます。そのうえで、それぞれの方法で期待できることと負担をお伝えし、患者さんと一緒に方針を決めていきます。

今回は、当院が矯正治療のどの段階で何を大切にしているかをお話しします。

まず聞きたいのは「どこを、どう変えたいか」

「前歯が出ているのが気になる」という言葉の中にも、さまざまな思いがあります。横顔を変えたい方、唇を閉じやすくしたい方、前歯で噛みやすくなりたい方。歯の重なりは気になるけれど、今の口元の印象は変えたくないという方もいます。

診察で見つかった特徴を、すべて同じ優先順位で治療するわけではありません。何を改善したいかによって、目指す歯の位置や、治療方法を選ぶときに重視することが変わります。

持病やアレルギー、服用している薬、これまでの歯科治療についても伺います。歯が動くときには、周囲の骨が吸収と形成を繰り返します。そのため、骨の働きに影響する薬の使用歴なども、治療計画を考えるうえで大切な情報です。

気になることは、歯並びと関係なさそうに思えてもお知らせください。

検査の数字だけで、治療方法は決まりません

矯正治療では、口の中や顔の写真、歯列の記録、必要なエックス線写真などを用いて状態を調べます。

「セファロ」は、一定の条件で撮影する頭部のエックス線写真です。歯やあごの位置関係を分析し、前歯の傾きなどを数値で確認できます。

しかし、数値だけで「抜歯が必要」「この装置が適している」と決めることはできません。実際の噛み合わせ、顔や口元の見え方、歯ぐきや歯を支える骨、顎関節の状態、患者さんの希望を合わせて判断します。

画像検査も、多く撮ればよいわけではありません。何を確かめたいのかを明確にし、得られる情報と被ばくを考えて選びます。必要な検査を選び、その結果を総合することが診断の基本です。

子どもの歯並びでは「今」と「これから」を分けて考えます

お子さんの歯並びは、永久歯への生え替わりやあごの成長によって変わります。今対応したほうがよいこともあれば、成長を観察してから治療時期を決めたほうがよいこともあります。

たとえば、上の永久歯の前歯が生えたばかりのころ、中央にすき間があったり、歯が少し傾いて見えたりすることがあります。その後、ほかの永久歯が生えてくる過程ですき間が小さくなる場合もあり、「みにくいアヒルの子時代」と呼ばれます。

ただし、前歯のすき間や凸凹が、すべて自然に整うわけではありません。歯の生える方向や場所の不足などを確認したうえで、見守ってよい変化かどうかを判断します。

また、前歯の噛み合わせがいったん改善しても、その後のあごの成長によって上下の位置関係が変わる場合があります。早く治療を始めれば、将来の変化をすべて防げるとは言えません。

指しゃぶりが長く続くと、前歯が噛み合わない「開咬」や、前歯が前に出た状態に関わることもあります。ただし、歯並びの原因を習慣だけで決めつけることもできません。歯の位置、あごの成長、口の周りの働きなどを合わせて見て、今できることと、これから見守ることを考えます。

上の前歯にすき間や傾きがある幼いアヒルと、前歯が整った白いアヒルを並べたイラスト

抜歯・非抜歯は、目指す口元まで考えて選びます

「歯を抜かずに治したい」というお気持ちは自然です。当院でも、歯を残して治療できる可能性を検討します。

一方、歯を並べる場所が大きく不足している場合、抜歯をせずに並べると、前歯が今より前に出たり、歯列を広げる必要が生じたりすることがあります。口元を後ろに下げる計画では抜歯が選択肢になる場合もありますが、歯を抜けば希望どおりの口元になると約束できるわけではありません。

判断するときには、歯の重なりだけでなく、骨格、唇の閉じやすさ、横顔、歯を支える骨の範囲などを確認します。そして、それぞれの方法でどのような変化が見込めるか、負担や限界は何かを比べます。

どの方法にも利点と限界があります。私たちは検査結果に基づいて妥当と考える方針を提案し、その変化や負担を患者さんが受け入れられるかどうか、一緒に確かめたいと考えています。

治療方法は、説明を聞いて一緒に決めるものです

私たちが適していると考える方法でも、患者さんにとって治療期間や装置の管理、口元の変化が受け入れられるとは限りません。

そのため、提案する方法で期待できることに加え、限界やリスク、ほかの選択肢もお伝えします。予定どおりに進まなかった場合にどう対応するかも、治療前に話し合っておきたいことです。

同意書への署名だけで、治療への同意が完結するわけではありません。説明を聞いて疑問を尋ね、ご自身が何を大切にしたいかを伝え、納得して選ぶ。その過程を大切にしています。

マウスピース矯正の完成予想は、治療結果の約束ではありません

マウスピース矯正では、画面上で歯の移動計画を見ることができます。患者さんと治療の目標を共有するのに役立ちますが、実際の歯が画面のとおりに動くとは限りません。

歯根や歯を支える組織の状態、必要な歯の動かし方、噛み合わせ、装着時間などが、実際の経過に関わります。治療を始めてからも、マウスピースが歯に合っているか、歯が計画に沿って動いているかを確認し、必要に応じて計画を調整します。

歯の動かし方によっては、ワイヤー矯正など別の方法を検討したほうがよい場合もあります。目立ちにくさや取り外しやすさは魅力ですが、希望する装置で必要な治療ができるかを判断することが、当院の装置選びの基本です。

画面上では歯並びを計画できても、実際の歯の動きには違いが生じることを示すイラスト

治療中は、歯並び以外の変化にも目を向けます

矯正治療中は、歯が動いているかだけでなく、歯や歯ぐきの状態も確認します。

装置の周囲などに汚れが残ると、むし歯や、歯の表面が白く濁る「白斑」につながることがあります。歯みがきの方法や食習慣を確認し、必要に応じてフッ化物の利用も考えます。

また、歯を動かす過程で、歯根が短くなる「歯根吸収」が起こることがあります。程度には個人差があるため、治療前に可能性を説明し、経過に応じて確認します。変化が見つかった場合には、その状態を踏まえて治療の進め方を検討します。

歯並びの改善を目指すことと、治療中の健康状態やリスクを確かめることは、どちらも大切です。

歯が並んだあとも、治療の続きがあります

歯を動かす治療が終わったあとは、整えた歯並びを保つための「保定」に移ります。保定装置の使い方や、その後の経過観察も治療計画の一部です。

歯並びは、治療後も成長や加齢、歯を支える組織の変化などの影響を受けます。保定をすれば、生涯まったく変わらないと保証できるわけではありません。

装置を外すときには治療結果を振り返り、その後も状態に合わせて見守っていきます。

納得できる治療のために

矯正治療は、装置を選ぶ前から始まっています。患者さんの希望を聞き、必要な検査で今の状態を調べ、方法ごとの変化と負担を比べる。そして治療中に計画を確かめ、歯が並んだあとも経過を見ていく。その一連の過程が大切です。

アルファ矯正歯科クリニックでは、ご自身の状態と治療の選択肢を理解していただいたうえで、皆様と一緒に治療方法を考えていきます。

よくある質問(FAQ)

Q.矯正の初診相談で、抜歯するかどうか決まりますか?
A.歯並びだけでなく、噛み合わせ、骨格、口元、歯を支える組織やご希望を確認して判断します。必要な検査を行ってから方針を説明する場合があります。

Q.子どもの歯が生え変わる時、歯並びは自然に治りますか?

A.生え変わりの途中で、歯並びが自然に変わることはあります。ただし、すべて治るわけではありません。今の状態が生え変わりによる一時的な変化なのか、治療や経過観察が必要なのかは、あごの成長も含めて矯正医の判断が必要です。

Q.マウスピース矯正ではシミュレーションどおりに治りますか?
A.画面は治療計画を示すもので、結果を保証するものではありません。実際の歯の動きや装着状況を確認し、必要に応じて計画を調整します。

Q.歯が並んだら、矯正治療はおしまいですか?
A.歯を動かす治療を行なった患者様は、その後整えた歯並びを保つための装置を必ずお使いいただきます。噛み合わせが安定するのを見届けるところまで、管理に含まれます。