世界中いろいろと、次々と、不安定な世の中が続いていますね。
大きな変化の時期であったとしても、私たちにできるのは、
目の前の仕事を着々と進めていくことだけなんでしょう。
ほんのささいなことでも、ずっと続けば、
結果的に相当量になっていることってありますよね。良いことでも悪いことでも。
自分にできる良い仕事を、たとえちょっとずつでも、
粛々と淡々と、積み重ねていきたいものです。
さて。日頃患者様にさまざまなご説明をさせていただいているわけですが、
言葉では伝わりづらく絵を描きたくなるのが「歯はどうやって動いているのか」。
さっと書く絵だとどうしてもごちゃごちゃしてしまい、
一方的な説明になっているようで気になっておりました。
もっと解りやすい図解などはないものかと探してみたのですが、なかなか見当たりません。
そこでこのブログで、なるべく解りやすくまとめてみることにします。
中学の娘に教わって、iPadのお絵描きアプリに初挑戦です!!!
まず、「歯を動かす」と言っても、矯正治療によって1本1本の「歯の形」を変えているわけではありません。
「骨の形」が自然と造り変わる仕組みを利用して、1本1本の歯がより良い場所に収まるのを手助けしているんです。
そもそもお口の中に見えている歯は、全体の長さの1/3程度。
残り2/3はいわゆる「歯根」。長い根っこが骨の中に植わるような構造になっています。
歯と骨は構造的にはすごく似てるんですが、歯は周りの骨と直接くっついているわけではなく、
歯根膜と呼ばれるクッションのような組織を介して植わっています。
このクッションは普段、咬んだ時の圧力から食べ物の硬さを感じとるセンサーとしての役割などを担っています。
ところで、骨というのはいつも同じ形のようで、常に造り替えられているのをご存じでしょうか。
「骨のリモデリング」と呼ばれる現象で、古い骨はいつも少しずつ吸収され少しずつ新しく置き換わっているんです。つまり骨も新陳代謝をしてるんですね。
例えば骨折をするとこの現象が活発に行われ、それによって骨が再びつながる仕組みです。
矯正治療では歯に適度な圧力を与えることで、この現象を活発にさせて、歯を動かしているんです。
歯に適度な圧力を加えると、植わっている骨の穴に圧力の偏りが生じます。
歯根膜というクッションに、引っ張られて伸ばされる側と押されて縮まる側とが生まれるわけですね。
歯根膜の伸ばされた側には「骨芽細胞」という細胞が現れ、新たな骨を造り始めます。
圧迫された歯根膜には「破骨細胞」が現れ、周りの骨を融かし始めます。
これによって、歯の植わっている骨の穴の位置が、歯根膜クッションが落ち着く場所に造り替えられるんです。
この作り替えが終わったら、また次の圧力をかけられるようになる、というわけですね。
つまり、矯正治療による歯の移動スピードは、骨の新陳代謝のスピードによるのです。
矯正治療はすぐに治療効果が出るものではない理由が、これで解ってもらえたかと思います。
また、強い圧力をかければかけるほど早く動く、というわけではないことも、解ってもらえると思います。
さらに言うと、新陳代謝を促すようようなこと、つまり血流を良くすることは、この反応がスムーズに行われることにつながります。
実際にはどういったことになるかというと、
1.タバコを吸うと口腔内の血流が悪くなりますので、矯正力をかけても歯が動きにくくなってしまいます。
2.左右バランス良くしっかり咬んで食事をすると、口腔内の血行が良くなりますので、矯正治療が順調に進みます。
3.冷え性の方は、ゆっくりお風呂に入るなどして、全身の血流を良くするのも良いことです。
4.炎症反応を抑える成分の入った痛み止めを飲み続けると、これらの反応が起こりにくくなり、歯の動きがゆっくりになる可能性があります。
5.新陳代謝が活発な若い学生さんに比べると、大人の矯正治療は時間がかかります。
などなど。矯正治療にまつわるいろんな現象は、これで説明がつきますね。
細かい細胞の話ですが、皆様もぜひ参考になさってください!