こんにちは。アルファ矯正歯科クリニックの齋藤晶子です。

秋といえば学会シーズン!
私の誕生日でもある10月8日と翌日9日の2日間、有楽町朝日ホールで開催された「第23回日本口腔筋機能療法(MFT)学会学術大会」に今年も参加してまいりました。

私はMFT学会の広報理事として運営にも関わっていますが、今大会は一参加者としても思い入れの強い内容でした。
ここでは今年のMFT学会の様子を、学術的な内容も含めてみなさまに伝わるようわかりやすくご紹介します。


MFTとは?——口の周りの機能を整えるセラピー

まず「MFT(Myofunctional Therapy)」という言葉に馴染みのない方も多いかもしれません。
MFTとは、舌・唇・頬などの口の周囲の筋肉の使い方を整えるためのトレーニングを行う療法(セラピー)です。
「舌で歯を押す」「口が開いている」などのクセを改善することで、悪い噛み合わせの改善、良い歯並びの安定が得られるばかりでなく、発音や呼吸やさらには全身の姿勢にも良い影響を与える可能性があります。

矯正治療では「歯を動かすこと」に注目が集まりがちですが、
“舌の位置”や“呼吸の仕方”を整えることが、治療の成功と治療後の長期安定に欠かせないのです。


今年の大会テーマ:「MFTの成功を目指して」

今年の学会の大会長は、歯科衛生士・石野由美子先生。参加登録者は過去最高の671名。
歯科衛生士や歯科医師はもちろん、様々な職種の医療従事者が全国から集まり、
会場の有楽町朝日ホールはほぼ満席の状態でした。

今年の大会テーマは「MFTの成功を目指して」。
“機能を正す”という一見シンプルそうに思えて、至極曖昧なMFTの「成功」をどう捉えればいいのか…
今回の大会では、実に様々な視点から深い議論が行われました。


教育講演:正しい知識を「見える化」する

1日目の午前の教育講演では、昭和医科大学の歯科衛生士・佐藤香織先生が
「MFTにおける教育用クリニカルパスの活用」について講演されました。
クリニカルパスとは、医科の世界でよく使われている、標準治療を整理して“見える化”する仕組み。
「目標」「練習内容」「評価方法」などを一覧で確認できるようにすることで、
新人の歯科衛生士が体系的に学んだりに、患者さんに一貫したトレーニングを提供できるようになります。

続いての講演は言語聴覚士・武井良子先生による「構音治療とMFT」。
ことばの教室で行われている発音トレーニングの解説と、
歯科医院内でのMFTとの関連を解説されました。
「小さな成功体験を積み重ねることが大切」という内容が、とても印象的でした。


熱気あふれるディスカッション——みんなでMFTを深める

1日目の午後のプログラムでは、歯科医師が中心のフリーディスカッションと、
歯科衛生士が中心のラウンドテーブルディスカッション(RTD)が開催されました。
参加者の誰もが発言の機会を与えられるこれらのセッションは、毎年とても人気です。

フリーディスカッションでは、
「どうすれば舌の正しい位置を習慣化できるか?」
「協力度が低い場合、どんな関わりが効果的か?」など、
日々の臨床に即した話題が自由に交わされました。
だれもが発言できる温かな雰囲気の中、日々の臨床における経験や工夫が惜しみなく共有されました。

一方別会場のRTDでは、歯科衛生士同士が経験年数ごとに分かれてグループディスカッションを行いました。
臨床の悩みを共有し合いアイデアを出し合う場として有意義で、どのテーブルも話が尽きない様子でした。


2日目の見どころ:専門職としての誇りと未来

2日目は、一般口演・ポスター発表に加え、
2つの特別講演とシンポジウムが行われました。

まず特別講演1では、東京科学大学の吉田直美先生が
「歯科衛生士の社会的価値を高めるために」と題して講演されました。
「衛生士が誇りを持って働ける社会をつくること」——
このメッセージは、参加した衛生士の胸に深く響いたことと思います。

続く特別講演2では、高橋矯正歯科医院の高橋滋樹先生が
「安静時の舌位(ぜつい)」について、多くの研究データをもとに丁寧に解説。
舌の正しい位置とは——
私自身の研究でも感じていたことが、理論的に整理される時間でした。
(MFT学会の専務理事である滋樹先生とは、後ほど直接お話できる機会があり、
困らせるほど質問攻めにしてしまいました!)


最後のシンポジウム:連携の力

今年のシンポジウムのテーマは「MFT臨床における歯科医師と歯科衛生士の連携」。
銀座並木通りさゆみ矯正歯科デンタルクリニック81と福増矯正歯科の2つのクリニックが登壇し、
“二人三脚のMFT臨床”を実例を交えて発表しました。

さゆみ先生も福増先生も、私にとっては医局の大先輩。
さゆみ先生のクリニックには人生相談に何度も訪れたり、
福増先生のクリニックには医局を出てすぐ勤務医として経験を積ませていただいたり、
私にとって非常に非常に縁が深い両クリニックです。

私にとっても大切な2つのクリニックで、
スタッフ全員が信頼し合い尊重し合って、日々の臨床を行なう様子が発表され

最前列で聴いていた私は本当に誇らしく、心の底から感動を覚えました。


未来に向けて——

私自身、MFT学会の広報理事として「正しい情報を、もっと多くの人に正しく伝えたい」と思いながら活動しています。
MFTは、患者様の努力もさることながら、
私たち医療者の正しい知識のアップデートと熱意が大切だということを、
改めて実感しました。

 

 


おわりに

実はMFTは、「誰でも、いつからでも始められること」。
舌の位置を意識する——それだけで、あなたの呼吸や姿勢、表情まで変わってくる可能性があります。

アルファ矯正歯科クリニックでは、
口腔機能に対する正しい理解の普及と、取り組みをやりやすくするために、
MFTに関する知識と訓練法をTictokInstagramでも配信しております。
コンテンツは今後もどんどん増やす予定ですので、みなさまもぜひごらんくださいね!!