近年マスク生活が続く中で、この際口元が見えないうちに歯並びを治したい!
という患者さんが増えています。
特に、マウスピース矯正や目立たない矯正も増えていて、矯正治療は昔ほど特別な治療ではなくなってきています。
ただし、「矯正は痛いって聞いた」「健康な歯を抜かないといけないらしい」など、よくわからないことが多いですよね?
今回は矯正治療に伴う抜歯について、わかりやすく解説します。
目次
1.矯正の際、歯を抜く必要性はあるのか?
2.抜歯が必要になるケース
3.まとめ
矯正の際、歯を抜く必要性はあるのか?
早速ですが、「矯正治療では健康な歯を抜かないといけないらしい」というのは、一言でお伝えすると「そうでもあるし、そうではないこともある!」が答えになります。
え!?!?!?
答えになってないじゃないか?
失礼致しました。
しかし、それが本質なのです。
読者の方の中には抜歯が必要な方もいれば、必要でない方もいます。
一概に歯並びだけを見て、抜歯を行うべきか、行わないべきかは判断できないのです。
抜歯をしない矯正治療をうたっている歯科医院もあると思います。
しかし抜歯をしない矯正治療にこだわると口元の突出感(いわゆるごぼ口)のあるお顔立になってしまうこともあります。矯正の先生とよく相談してから治療するようにしましょう。
抜歯が必要になるケース
じゃあ、私の場合はどうなの?
気になるところですね。
抜歯の必要性の有無については、骨格や歯の大きさ、年齢など次に説明する項目を総合的に検査・診断して決定します。
歯の大きさと顎の骨の大きさの調和度
顎(あご)の骨は通常通りの大きさだけど、歯の大きさが大きすぎて並び切らない。このような場合には抜歯が必要となることが多いです。
反対に、歯の大きさは通常通りだけれど、顎の骨が小さくて歯が並びきらないといった場合も抜歯が必要となることがあります。
また、歯の大きさはある程度歯を削ることで改善出来る場合があります。わずかな歯並びのズレである場合には、抜歯をせず、歯を削って大きさの調整をすることで矯正が可能となる場合もあります。
歯の位置
全体的に歯並びがガタガタしているんだけど…という方、日本人にとても多いです。このような歯並びを専門用語では叢生(そうせい)と呼びます。
叢生の原因には歯が傾いて生えている傾斜(けいしゃ)や、歯の向きが回転しているような捻転(ねんてん)など、多く名前がついていますが、八重歯を想像してもらえると一番分かりやすいかもしれません。
八重歯のような、正しい歯列(歯並び)から飛び出した歯を元の位置に戻す場合には抜歯が必要となることが多いです。(他の歯の歯並びにもよります。)
一方で、傾斜した歯や捻転した歯を正しい場所にもどしてあげると、綺麗な歯並びになることもあります。
前歯の位置、傾き
奥歯の噛み合わせは正しい位置なのに、前歯だけが前に飛び出している。
全体的には問題ない歯並びだけど、どうも前歯だけでてしまっている。
など、一番目につく部分だけに、気になる方も多いのではないでしょうか。
前歯の治療をする場合には、気をつけなければならないことがたくさんあります。
顔の骨の位置からどの程度出っ歯なのか、どの程度前歯を動かす必要があるのか、他の歯の移動だけで、前歯がちゃんと並ぶのかどうか…
それらを判断するための分析方法や計算式を用いて、総合的に判断して抜歯の有無を決定します。
安易に抜歯をしたくないという理由で無理やり前歯を動かしてしまったような場合、将来的に見た目よりももっと大変なことになってしまうこともありますので、ご注意下さい。
年齢
矯正治療は若いときから始めることに越したことはない、と考えているドクターも多いのですが、それには理由があります。
前述した顎が小さい場合(特に上あご)には、幼少期であれば広げることが可能だからです。
どういう事かというと、上あごの骨は若いうちは癒合(骨と骨がくっつくこと)が完全ではないため、器具を装着することで徐々に上あごの骨を大きく拡大することが出来るのです。反対に、下あごが前に出てしまいそうな予測が着く場合(成長量や遺伝などから判断)、下あごの成長を抑える器具を装着することで、将来的な受け口を予防出来る場合もあります。
また、顎の骨自体が柔らかいため、成人と比較して歯が動きやすいのです。そのため、奥歯を後ろに移動させることで、通常であれば抜歯が必要となるケースであっても、抜歯を回避できる可能性があります。
とはいえ、やっと成人して自分のお金で矯正出来るのに!といった方も多いでしょう。成人の場合、顎の骨自体を大きくすることは難しく、また、奥歯のような大きい歯を移動させることも難しくなります。
最近ではインプラントアンカーといった、小さなインプラントを埋入(まいにゅう)し、奥歯を後に動かして歯を並べるスペースを作り出すといった方法もありますが、元々日本人の場合には顎の骨が小さいため大きなスペースが必要な場合には、やはり抜歯が必要となることが多いです。
親知らず
これは通常の抜歯とは異なりますが、矯正治療を行った歯列は一般的に後戻りすると言われています。元の歯並びにもどってしまう現象です。
そのため、矯正治療が終了した後は、リテーナーと呼ばれる装置を一定期間装着することが求められます。
その際に、親知らずが生えてくると更に歯並びの変化を助長してしまう場合があるため、矯正治療を始める前に親知らずの抜歯を勧められることが多いです。
まとめ
以上、簡単に抜歯が必要となるケースをご紹介しましたが、これらを総合的に判断して抜歯の有無を決定します。
模型による診査、レントゲン・CTによる診査、見た目、噛み合わせなど、総合的に判断して初めて治療方針が決定されます。
歯並びは今後一生付き合っていくものですので、安易に抜歯をしたくないという理由で無理やり矯正治療を始めることのないよう、信頼できる先生と相談しながら治療してくださいね。
- 抜歯の必要性の有無は歯の大きさ、顎の大きさ、年齢、骨格など様々な検査を行って初めて決定できる。
- 矯正には必ず抜歯が必要なわけではないが、抜歯をしなければならないケースも多くある。
- 抜歯を避けたいがために無理やり歯を並べると、大変なことになる場合もある。