笑ったときに歯ぐきが大きく見える「ガミースマイル」。
鏡や写真を見て、
「笑うと歯ぐきが見えすぎる気がする」
「矯正したらガミースマイルも治りますか?」
「子どものうちに治しておいたほうがいいですか?」
と気にされている方もいらっしゃると思います。
もちろん、ガミースマイルをコンプレックスに感じている方にとって、それを改善したいという気持ちはとても自然なものです。
でも、ここでぜひ知っておいてほしいことがあります。
ガミースマイルは、一生同じように目立ち続けるものではありません。
実は、笑ったときの「歯・歯ぐき・唇」の見え方は年齢とともにかなり変化します。私たちの笑顔は一生同じではないのです。
そもそもガミースマイルとは?
ガミースマイルとは、笑ったときに上の前歯だけでなく、その上の歯ぐきが大きく見える笑顔のことです。
原因として考えられるのは、上あごの上下的な位置、前歯の形、上唇の長さ、笑ったときに上唇を持ち上げる筋肉の働きなど、いくつもの要素が関係しています。
つまり、
「ガミースマイルだから、原因は上あごの骨」
と単純に決められるものではないのです。
そしてもうひとつ重要なのが、年齢です。
同じ人でも10代の笑顔と40代、50代の笑顔では、歯の見え方はかなり違ってきます。
ガミースマイルが目立ちやすいのは、むしろ若い時期
ガミースマイルは、若い人ほど目立ちやすい特徴のひとつです。
若い頃は顔の筋肉に張りがあり、笑ったときに大きく動きます。歯が見えやすく、笑顔が大きい人では歯ぐきまで見えやすくなるというわけです。
でも、これって本当に「悪い笑顔」でしょうか?
たとえば10代の頃の新垣結衣さんの笑顔を思い浮かべてみてください。

笑ったときに上の前歯がしっかり見え、写真によっては歯ぐきも見えています。それでも決して不自然な印象ではなく、むしろ若々しく、元気で、明るい笑顔に見えるのではないでしょうか。
若い人の笑顔では、歯や歯ぐきがある程度しっかり見えること自体が、その年代らしい魅力になることもあります。
ですから、お子さんが笑ったときに歯ぐきが見えるからといって、すぐに「異常」「治さなければいけない」と考える必要はありません。
一期治療でガミースマイルは治せる?
成長期のお子さんに行う矯正治療、いわゆる「一期治療」や「顎顔面矯正」では、成長を利用しながら上下のあごのバランスや歯が並ぶ環境を整えていきます。
確かに成長期の矯正治療によって顎顔面の成長方向に働きかけることはできますが、それによって得られる骨格的な変化には限界があります。
実際、重度の骨格的な上顎垂直過成長に伴うガミースマイルでは、成人後に外科的矯正治療が検討されることもあります。成人の本格治療でアンカースクリューなどを利用することもあります。
さらにガミースマイルは骨格だけで決まるものではなく、唇の長さや動きの要素も加わります。
成長期については、
ガミースマイルを消すことだけを目的に、骨格を大きく変えようとする必要はない
と私たちは考えています。
実は年齢とともに「上の歯」は見えにくくなっていく
人の顔は、年齢とともに変化します。
顔面骨の上には筋肉や脂肪、皮膚などの軟組織が乗っています。加齢に伴ってそれらの張りや位置関係が変化し、顔の表面は少しずつ下方へ変化していきます。
唇も例外ではありません。
その結果、若い頃には笑ったときに上の前歯や歯ぐきがしっかり見えていた人でも、年齢を重ねるにつれて、だんだん上の歯が見えにくくなってきます。

若い頃は、
「上の前歯+少し歯ぐき」
だった笑顔が、
年齢を重ねると、
「上の前歯だけ」
になり、さらに年齢が進むと、
「下の前歯のほうが目立つ」
という変化が起こってくるのです。
これは論文でも確認されていて、加齢に伴って上唇が長くなり、上顎前歯の露出量が減少する一方、下顎前歯の露出量は増加することが報告されています。
つまり、ガミースマイルは年齢という時間軸を抜きにして考えることができないのです。
若い笑顔と、大人の笑顔は違っていい
若い人の笑顔は、上唇が大きく動き、上の前歯がしっかり見える。
場合によっては歯ぐきも少し見える。
これは元気で活発、明るい印象につながります。
一方、中高年になると上の歯の見える量が減っていきます。
歯ぐきはほとんど見えず、歯そのものの露出も少なくなります。
こちらは若々しさというより、落ち着いた、大人っぽい笑顔になっていきます。
どちらが正解というわけではありません。
笑顔にも、その年代らしさがあります。
だからこそ10代のお子さんの笑顔を、40代、50代の大人と同じ基準で評価する必要はないのです。
「理想的なスマイル」とは?
一般的に美しいとスマイルというと、確かに、笑ったときに上の前歯だけが自然に見えていることはひとつの指標です。

当院のTikTokでも、理想的なスマイルをつくるトレーニング方法を紹介しています。
笑ったときに上唇を必要以上に大きく持ち上げるクセがある若い方は、笑顔の筋肉の使い方を練習しましょう。
繰り返し練習することで、自分にとって自然で美しく見える笑い方を覚えていくことができます。
特に口呼吸が癖になっていて、いつも唇が開いている人は、鼻の下が短くなっているはずです。
上の唇が富士山型に短くなっている人は、伸ばすようにすると良いでしょう。
大人は「口角を上げる」ことが大切
一方、中高年のスマイルでは考え方が少し変わります。
年齢とともに皮膚と筋肉が下に下がっているので、上に持ち上げることを心がけましょう。
特に意識したいのは、口角をしっかり横方向・上方向へ動かすことです。
「上の前歯が見える位置まで口角を上げる」ことは、大人にとっては結構大変なはずです。
こちらのトレーニングも動画で紹介しています。
当院で矯正治療を行っている患者様であれば、年齢を問わず口腔筋機能療法(MFT)を併用することが可能です。治療中に気になることがありましたら、ぜひご相談ください。
「きれいなスマイル」は静止写真だけでは決められない
矯正歯科では、スマイルを評価するときにさまざまな基準があります。
上の前歯がどのくらい見えるか。
歯ぐきがどのくらい見えるか。
前歯の先端と下唇のラインが調和しているか。
左右の口角の高さはどうか。
こうした形態的な評価は、もちろん大切です。
治療計画を立てるうえでも必要なものです。
でも、それが「良い笑顔のすべて」ではありません。
SNSには、一瞬を切り取った美しいスマイル写真がたくさん並んでいます。
けれど、実際に私たちが「素敵な笑顔だな」と感じる瞬間って、本当にそれだけでしょうか。
誰かに会えて嬉しくて笑う。
大好きな人と話していて、思わず笑ってしまう。
子どもが夢中になって遊びながら笑う。
そんな笑顔は、一枚の静止写真では表せません。
目が動き、頬が動き、口角が上がり、声が出て、その人の感情が一緒に伝わってきます。
笑顔は「形」ではなく「動き」でもあり、その人の感情の表現でもあるからです。
だから私は、「SNS映えするスマイル」と「魅力的なスマイル」は、必ずしも同じではないと思っています。
良いスマイルは「つくる」だけではなく、その人から「出てくる」もの
矯正歯科医ですから、私はもちろん歯並びをきれいにしたいと思っています。
上の前歯が美しく並び、唇とのバランスが整ったスマイルを目指して治療します。
必要であれば、スマイルトレーニングも行います。
でも、その先にあるものも忘れたくありません。
嬉しい。
楽しい。
大好き。
会えてよかった。
そんな感情があふれたときに出てくる笑顔は、誰しも必ず魅力的です。もしそう思えないなら、きっと別の理由があるのでしょう。
心の底から笑顔になれる矯正治療を。私たちは目指しています。












