とっても寒い毎日ですね、私の実家の滋賀でも例年以上の雪が降っているようです。そのうえ受験生をかかえるわが家では、家にこもってもくもくと勉強がはかどる雰囲気になっています。

子どもに勉強させているばかりではなく、私も最近読んだ専門書について、内容をブログにまとめてみようと思い立ちました。めちゃくちゃ専門的な内容の成書なんですが、あえてこの内容を一般の皆様向けにまとめてみたら?という試みです。

こういうとんでもない思い付きを実現するには、やっぱりAI Claudeちゃんと一緒に仕事をするのが一番ですね!私の「想い」だけはしっかり伝わるよう頑張ってまとめてみましたので、ご一読いただけると嬉しいです。

私が学んだことを拡散してくれるAIちゃんの様子をイラストにしてもらいました~

 

今回私がご紹介したい矯正専門書は「THE ALIGNER ORTHO」。リンク先を見ていただくとわかると思うんですが、専門書らしからぬセンス抜群の装丁にまず度肝を抜かれます。

知る人ぞ知る配信番組「ALIGNER RADIO」

この本を理解するには、まず「ALIGNER RADIO」という番組について説明する必要があります。

深夜22時から始まるこのZoom配信番組は、岡野修一郎先生と南館崇夫先生という二人の矯正歯科医によって不定期に実施されているものです。事前申し込みさえすれば誰でも基本無料で視聴させてもらえるという、桁外れのありがたさです。

内容は、アライナーで治療したひとつの症例を深く深く掘り下げて、とことん語り尽くす番組。盛り上がりすぎて日付が変わっても終わらないことがほとんど、ときには高名なゲストを招いてディスカッションする回もあります。

深夜ラジオのような肩の力が抜けた雰囲気の中で、雑談も交えながら診断や治療のポイントが次々と抽出されていきます。リアルタイムで視聴者からの質問も飛び交って、多次元的なコミュニケーションが生まれる雰囲気です。進行役の南館先生がどんなささいな情報も質問も全て拾ってくださるので、その場で完璧に溜飲を下げる実感があります。

結論を出すことにこだわらず、マウントもしないしバトルもしない、流派や概念にとらわれず、さまざまな視点から深く掘り下げ合う。参加者全員との一体感から生じる化学反応をみんなで共有できるという、序列の強い医療界では希有な場と言えるのが「ALIGNER RADIO」なのです。

 

誤解と偏見に挑む一冊

「THE ALIGNER ORTHO」は、このALIGNER RADIOを書籍化したものです。

日本の矯正歯科業界ではワイヤー治療が長年主流を占める中で、アライナー矯正(マウスピース矯正)は誤解と偏見に満ちた環境にあったとも言え、学術的な場ではなかなかその価値を認められてきませんでした。一部の矯正医たちが偏った情報を広めることで、混乱を招いてきたという現実もあります。

この本は、そうした課題に真正面から挑んでいます。岡野先生と南館先生が、正直にまっとうにアライナー矯正治療の本質を解き明かし、具体的で実践的に12の症例を供覧してくれています。

岡野先生の治療哲学は明快です。

「いかにシンプルに、いかに短期間で、いかに少ない来院回数で、いかに質の高いフィニッシュにつなげるか」

患者さんにとっては、これ以上ない治療方針ですよね。通院回数は少ない方がいいし、治療期間も短い方がいい。でも仕上がりは妥協したくない。この本には、そのすべてのエッセンスが詰め込まれています。

 

私が学んだ「アライナー矯正の本質」

この本を読んで私が大きな学びを得たポイントを、いくつかお伝えします。

ワイヤー矯正とは根本的に違う

まず理解していただきたいのは、アライナー矯正(マウスピース矯正)とワイヤー矯正は、同じ「矯正」でも考え方が全然違うということです。

まず歯を動かすために発揮させる装置の力に、違いがあることを理解しておかなければいけません。

アライナー治療の矯正力は、ワイヤー治療の矯正力よりも弱いです。ワイヤー矯正ではいろんな形や材質の金属やゴムなどを使いこなして歯を移動させますが、アライナー治療では最初から最後まで前歯から奥歯まで単一の薄いプラスチック材料で移動させます。

この大きな違いを理解しているかどうかで、治療経過のイメージは変わってきます。

顎間ゴムの使い分けが鍵

「顎間ゴム」って聞いたことありますか? 上下の歯にゴムをかけて、歯の移動を助ける装置です。

ワイヤー治療でも使うこのゴムを、アライナー治療でも使いますが、岡野先生はワイヤー矯正よりも強い力でゴムをかけることを推奨しています。

6オンスのゴムは、上の奥歯を順番に後ろへ移動させる時や歯列全体で動かす時に、4.5オンスのゴムは、V字にゴムをかける時に使うとのことでした。被せ物をしている歯に顎間ゴムを設置したい場合は、プレシジョンカットという切れ込みを入れるそうです。

細かいテクニックも言語化されているので、非常に具体的で参考になります。

抜歯矯正は特に注意が必要

歯を抜いて矯正する場合、アライナー治療はワイヤー治療よりも難しくなると一般的に言われています。特に、ガタガタ(叢生)が少ない症例で抜歯が必要な場合は要注意。奥歯の負担が増えて前に傾きやすくなり、マウスピースがうまくフィットしなくなってしまうんです。

そういったことにならないように、岡野先生は治療計画を立てる際に次のような指示を出すそうです。

「最初に犬歯を抜歯スペースの半分まで動かして、その時前歯は動かさないでください。次は4本の前歯を犬歯の位置まで動かしてください。その後は犬歯と前歯を同時に動かしてスペースを閉鎖してください」

こういう順序立てた計画が、治療の成功率を格段に上げるとのことです。

その他細かなテクニック

大きな歯の動きは一度目で行い、噛み合わせで先に当たってしまう部分を無くす微調整は二度目の治療で行うのが、岡野先生のやり方です。

下の前歯を後ろに下げる場合は、小臼歯に大きな水平のでっぱりをつけたり、一番奥歯が鋏状に嚙み合っていなければ、その1本手前の歯に大きな水平のでっぱりをつけます。

一番奥の歯にゴムをかける際はでっぱりで浮き上がりを防止したり、フィットしていない部分はでっぱりを除去することもあります。

こういう細かなテクニックが、より厳密な歯のコントロールにつながるんです。

 

ワイヤー矯正との決定的な違い

私がこの本を読んで一番感じたのは、アライナー矯正の学び方そのものが革新的だということです。

ワイヤー矯正ではまず理論を学習する必要がありました。「こういう力をかけるとこう動く」という原理原則を、頭の中で理解することから始まります。毎日の臨床では、理論通りに治療が進んでいるのか見分けるのがドクターの仕事です。

でもアライナー矯正は違います。

治療計画ソフトによって、それぞれの患者様の歯が1本ずつ3Dで動くイメージをはっきりと思い描くところからすべてが始まります。AIによってありえない動きが提案されていれば、シミュレーション画面の中で修正したり付加装置を工夫するのがドクターの仕事になります。

患者さんにとっては、ワイヤー矯正はクリニックでの毎月の施術にお任せすることが多いのに対して、アライナー矯正では治療前に「自分の歯がどう動いていくのか」を3Dアニメーションで見て、自己管理のモチベーションを上げることが非常に大切です。

 

ALIGNER RADIOの熱心な視聴者として

私はALIGNER RADIOの熱心な視聴者です。深夜22時からの配信を、毎回楽しみにしています。

だからこそ、この本を手に入れることができて本当に満足しています。

聞いている最中は「ああ、そうか!」と思っても、時間が経つと細かいイメージがあやふやになってしまいます。成書になっていれば、自分の知識として繰り返し定着させることができます。

この本を通じて、より安心してアライナー治療を提供できる自信が深まったんです。

 

患者さんに伝えたいこと

なぜ私がこんなに長々と専門書の話をしているかというと、患者さんに知っておいてほしいことがあるからです。

それは、「歯科矯正の世界は日々進化している」ということ。

そして、「私たちが何を大切にしているか」を知ってほしいということです。

岡野先生の「いかにシンプルに、いかに短期間で、いかに少ない来院回数で、いかに質の高いフィニッシュにつなげるか」という哲学は、私も全面的に共感します。

これは決して「手抜き」じゃないんです。むしろ逆で、最高の効率で最高の結果を出すための、高度な技術と深い思考の結果なんです。

患者さんの負担を減らしながら、最高の結果を出す。そのために勉強をし続ける。

私の臨床もそうありたいというスタンスを、今回改めて確信しました。

最後に

一般の方がこの記事を読んで、「THE ALIGNER ORTHO」という専門書を手に取ることはないでしょう。

でも、あなたの歯並びを治療している歯科医が、こういう本を読んで日々研鑽を積んでいるんだということを知っていただけたら嬉しいです。

そして、アライナー矯正(マウスピース矯正)が、単なる「透明で目立たない矯正装置」というだけでなく、非常に奥深い考察の上にあることを理解していただけたら幸いです。

私たちは、患者さん一人ひとりに最適な治療を提供するために、こうして学び続けています

深夜の配信番組を聴きながら、「この考え方は自分の患者さんにも使えるかもしれない」と考える。専門書を何度も読み返しながら、「もっといい方法はないか」と模索する。

そういう日々の積み重ねが、患者様ひとりひとりの笑顔につながると信じています。

私たち歯科医が何を考え、何を大切にして治療しているか、少しでも伝わったでしょうか。

あなたの歯並びが美しくなることで、あなたの人生がより豊かになることを、心から願っています。