2026年が始まりました!今年も世の中は変化の年になることは間違いないでしょう!

そして私自身も50代になり、わが子たちも大学受験を意識する年齢。つまり私の身の回りも、次の時代を意識する場面が増えました。

年齢とともに置かれる立場も、自然と押しあがってきたことを感じます。話す相手が年下の確率も増え、関わる人の範囲も広がりました。話す内容も大切な重い話が増え、軽はずみな行動にも気をつけなくてはなりません。

いつのまにかピント外れな大人にならないよう、受信アンテナを敏感にすることを大切にしたいです。

チャッピー君に「感性の受信アンテナ」を描いてもらいました(^^)

 

去年末に参加した「第三回矯正歯科長期安定研究会」に集まった先生方も、皆様アンテナが敏感なレジェンドばかりでした。この研究会は全国の第一線で活躍されている先生方が、何十年にもわたる臨床経験や研究成果を共有する希少な場になっています。

当法人では「矯正歯科」の「長期安定」を「研究」するこの会で、矯正治療後も安定して機能し続ける治療結果を求めて、毎年欠かさず症例発表しています。

日進月歩の医療業界では、最新の情報を仕入れることが大切なのはもちろんです。でも信頼できる医療を提供するためには、ずっと変わらない普遍的な結果を求めるというのもまた必要不可欠だと考えます。

このブログでは、第三回長期安定研究会の講演内容の中から特に印象に残った講演内容と、私自身の気づきをまとめておこうと思います。

 

根岸 慎一先生|口腔機能の発達が“歯並びの未来”を決める

日本大学松戸歯学部歯科矯正学講座教授根岸慎一先生の講演では、矯正治療の目的は単に歯を並べることではなく、顎顔面形態に適応した咬合と、それに調和した口腔機能を獲得することにあると示されました。研究では、前歯部叢生の発症には歯列形態の成長変化だけでなく、咬合力、口唇閉鎖力、咀嚼運動パターンといった機能的要因が深く関与していることが示され、治療後の安定には「歯列に適応した機能の獲得」が不可欠であると強調されていました。小学生の間に下顎前歯の叢生が増悪する子もいれば緩和する子もいることを縦断的に調べた研究などから、成長期の叢生発症と口腔機能の発達に関連があるなら、矯正治療後の長期安定に口腔機能が与える影響も大きいのではないかと考察されていました。

この講演から改めて感じたのは、矯正治療は「正しく使える口」を育てることでもあるという点です。歯を精密に動かしても、舌の癖や噛み方、呼吸などの機能が整わなければ、長期的な安定を得ることは困難になるでしょう。日常診療でも、後戻りの背景に生活習慣や筋機能の影響が見える場面も多々ありますので、研究データとして裏付けられる意義は非常に大きいと感じました。

そして世代としては私よりも若い教授でありながら、先人たちが積み上げてきた疫学研究や臨床知見を丁寧に継承し、それを次世代の臨床へつなげようとする姿勢にも強い信頼感を感じました。懇親会などでは気さくに隣の席に座らせてもらえたりするオープンマインドな根岸教授ですが、新しい技術だけに流されるのではなく、医局に残る長年のデータをフル活用して患者さんの将来を守ろうとする姿勢は温かみを感じます。私自身も治療後の安定を見据え、機能の育成まで含めた矯正治療をより丁寧に実践していきたいと感じました。

 

犬束信一先生|先天性疾患では機能を育てることが本質になる

 愛知県安城市で開業されている犬束信一先生は、先天性疾患に対する矯正歯科治療のプロフェッショナルとして近年様々な学会で講演をされている有名な先生です。今回も、先天性疾患に対する矯正治療が咀嚼・嚥下・発音・呼吸といった口腔機能の回復と発達を支える医療であることを強調されていました。先天性疾患をもつ患児では、機能獲得が不十分なことも多く、歯列形態の改善や長期安定のためには機能の確立が非常に重要になってきます。また、顔面や顎骨の成長異常を伴うケースでは、成長期からの早期介入が、将来的な侵襲を軽減する可能性がある一方、治療計画の妥当性、患児や保護者との目標共有、治療への耐性など、多くの不確実性と向き合う治療であることも示されました。18年にわたるPierre Robin症候群の症例報告は、犬束先生の取り組みの重みを実感する内容でした。

「系統的脱感作法」という言葉を犬束先生の講演で知り、私の臨床で無意識に経験として積み重ねてきたことが理論として裏付けられた感覚があります。矯正専門のクリニックとして他には変え難い社会的に重要な役割を担われている姿勢は、我々にとって大きな指針となります。そして後継者育成のためにと積極的に発信されている姿勢は、医療は単なるビジネスではなく臨床哲学を次世代へ伝えていく責任を伴う営みであることを感じます。患者さん一人ひとりの人生に長く寄り添う矯正治療だからこそ、未来まで見据えた判断をする重責を熟考させられました。

 

布川隆三先生|妥協のない治療結果

大阪府東大阪市で開業されている布川隆三先生は、矯正治療の長期安定とは「術後10年経過しても、しっかり噛めて生理的な機能が円滑に働いている状態」であると定義されていました。歯がきれいに並ぶことだけではなく、顎関節との調和、咀嚼・嚥下・発音といった機能、歯や歯周組織にかかる力のバランスなど、さまざまな要素が調和して初めて安定した噛み合わせが保たれるという考え方です。そのため、矯正治療は単に歯を動かす技術ではなく、「咬合治療の一つ」として総合的に捉えることが重要であり、一般歯科との連携も欠かせないと強調されました。治療の仕上がりを患者さんと一緒に確かめるために口腔内スキャナーを使うというところに、結果にこだわる厳しさを感じました。

私が特に印象に残ったのは、保存性や予後の悪い歯を抜歯対象に選ぶという姿勢です。当院でもそのように診断することが増えてきましたが、目先の治りやすさという意味ではわざわざ困難な道を選択することになるので、患者さんの利益を最大限に考えると悩ましいところです。布川先生は患者さんに本質をしっかり伝えながら治療を進めていくタイプの先生という印象を受け、症例にも高い基準を持って治療に臨まれていることが伝わってきます。こうした妥協のない姿勢が、長期に安定するブレない結果につながり、布川先生が一流のドクターだと言われる所以に納得をしました。

 

菅原準二先生|前進し続ける姿勢が、長期安定をつくる

宮城県仙台市で開業されている菅原準二先生は半世紀にわたる臨床の中で、多くの再治療症例を経験したことが、長期安定を考えるきっかけとなったそうです。エビデンスが十分でない臨床の場においても、より良い方法を探り続ける姿勢が重要であると強調されていました。成長期患者では治療時期の選択、成人では論理的な治療設計や患者協力に依存しない保定、さらに5年後のアウトカム評価までを重視するという、極めて実践的な指針が示されました。

チンキャップの効果に関する論文が世界のランドマークとなったこと、海外の新しい治療法をいち早く日本に導入したこと、さらに74歳で開業したことなど、喜寿を迎えた菅原先生の常に挑戦をし続ける生き様はとても刺激的でした。何歳になっても言い訳せず、時代にとらわれることなく、自分が信じた道を俊敏に切り拓くまっすぐなエネルギーに迫力を感じました。

 

浅井保彦先生|39年後も噛める歯並びが教えてくれる、矯正治療の本当の価値

岐阜県岐阜市で開業されている浅井保彦先生は、9歳から治療を開始した叢生の患者さんが、治療後39年を経過しても良好な噛み合わせを維持している症例を報告されました。段階的に装置を増やしながら、歯を抜かずに27か月間歯を並べ、治療後は約10年間夜間のみ保定装置を使用しました。成長に伴う変化や親知らずの抜歯、噛み合わせの微調整を重ねながらも、51歳になった現在まで安定した状態が保たれていることは、矯正治療が人生に寄り添う医療であることを示しています。また、かかりつけ歯科医による継続的なケアと、患者さん自身のメインテナンス意識が長期安定に大きく寄与している点にも言及されていました。

浅井先生はいつも笑顔で明るく、学び続ける姿勢を止めない、多くのドクターから慕われる先生です。年齢を重ねても情報を常にアップデートし、出典を明確にする誠実さが、自然と多くのファンを生むのだと思います。浅井先生は「リラップス(後戻り)」と「リカレンス(再発)」は別物であるとおっしゃっており、私は大きくうなずきながら聞いていました。「後戻りと後変化は違う」と私は常々考えていて、矯正治療後の「後戻り」と呼ばれる現象は生体がバランスを保とうとする防御反応とも捉えられ、観察すべき大切な反応ととらえることもできるのではないかと考えています。浅井先生のご発表を聞いて、長期的な安定とは、完璧さを維持し続けることではなく、変化をとらえて上手に付き合うことなのだと改めて気づかされました。

チャッピー君に「感受性の高い腕の良い矯正ドクター」を描いてもらったら、頭から光線が出ちゃってました(笑)

 

AIにもお手伝いしてもらいながら改めて第三回矯正歯科長期安定研究会の内容をまとめてみると、高名なドクターはどなたも、何歳になっても多角的な視点で発信しつつも受信もしていることを再認識できました。ずっと安定しているように見えて、ずっと進化し続けている貪欲さが、どなたも本当にかっこいいと思います!丁寧な人生を積み重ねは、ほかの何にも代えがたい信念を生むのかもしれません。

私もひたすらに!日々の積み重ねを、できるだけ解像度高く!今後も精進していきたい所存です。