こんにちは、アルファ矯正歯科クリニック院長のさいとうあきこです。

あっというまに3月も後半、近所の桜がボチボチ咲き始めています。年々花粉症がひどくなっている私ですが、クリニックのお隣の皮膚科さんで良い薬をもらうことを覚えてから、安心して過ごせるようになりました。最新のお薬はよく効きますよぉ~ガマンする必要はまったくないですよぉ~と、みなさまにも強く強くお勧めしておきますね!

 

さてさて私は今月、白金のシェラトン都ホテル東京で開催された「第25回 口腔筋機能療法(MFT)講習会 ベーシック実習コース」に参加してきました。私のルーツとも言える講習会をこのタイミングで改めて受けたことによって、この分野の奥深さと大切さを再確認できました。今回はその内容と、私自身がこの分野に関わるようになったきっかけを、AI Claudeちゃんと一緒にまとめてみましたのでご一読いただけると嬉しいです。

講習会の講師は高橋治先生(上段左)と奥様で衛生士の高橋未哉子先生(上段右)、上段真ん中はMFT学会会長で私の医局の先輩の坂本輝雄先生です!

まず、MFTってなんですか?

MFT(Myofunctional Therapy)、日本語で「口腔筋機能療法」と言います。舌・唇・頬などの口まわりの筋肉をトレーニングすることで、口腔機能全体を改善しようという療法です。

「舌を出して飲み込む癖(舌突出癖)」「口で呼吸する習慣(口呼吸)」「指しゃぶり」といった日常の癖が、歯並びに大きく影響することがわかっています。

MFTはそうした後天的な筋肉の不調和を整えることで、咀嚼・嚥下・発音・呼吸といった機能全体の改善を目指します。さらに矯正治療と組み合わせることで、治療効果がより安定しやすくなる、それがMFTの大きな魅力です。

 

私とMFTの出会い——サクラメントから始まった話

私は1999年に東京歯科大学を卒業し、2003年に同大学の歯科矯正学講座の研修課程を修了しました。

修了直後、恩師だった山口秀晴教授に言われるがままに向かった先が、アメリカ・カリフォルニア州サクラメント。当時のMFTの権威であるZickefooseご夫妻の4日間のベーシックコースを修了し、さらに山口教授にくっついてZickefooseご夫妻のご自宅にもお邪魔させていただき、さらにさらにIAOM(国際口腔顔面筋機能学会)の国際会議で、英語で40分の口頭発表を行うという大舞台にも立たせていただきました。当時の自分にとっては、すべてが刺激的で強烈な冒険そのものでした。

ベーシックコース参加者の集合写真(左)と、ご夫妻のご自宅パーティでの一幕(右)

そんな貴重な経験から、私は「舌と歯並びの関係」に関して研究を続けることがライフワークとなりました、舌圧の測定や超音波を使った舌の観察など、様々な角度からMFTと矯正歯科の接点を探ってきました。そして2022年からMFT学会の広報委員を拝命し、2024年から現在まで広報理事として学会運営にも携わっています

2日間の講習会で繰り返し強調されていたこと

今回の講習会では、多くのトピックが扱われましたが、2日間を通じて強調されたテーマがいくつかありました。私の気づきが大きかった内容について、簡単にまとめたいと思います。

「習慣化」こそがゴール

MFTで一番大事なことは「習慣化」です。患者さんに自宅でやってもらうレッスンは「できること」を目標にするのではなく、「毎日続けること」。毎日続けることによって徐々に、正しい口腔機能を身につけることができるようになるというのが、高橋先生ご夫妻の教えです。

無意識にやっていた悪い癖や、言われても思い通りに動かせない動作は、割と短期間で言われればできる程度までは改善可能です。そうであっても咀嚼・嚥下・発音・呼吸といった日常生活のなかでは、悪い癖のついた動きが続いてしまうことがよくあります。それはまだ繰り返しが足りない、ということ。MFTの訓練は、根気強く長く続けることが最も大切です。患者自身がMFTの重要性を知り、自己管理でも続けるようになることが理想のゴールだということを、私はやっと本質的に理解することができました。

「鼻で息、舌は上あご、歯を離す」

安静時の正しい口腔姿勢として「鼻で息、舌は上あご、歯を離す」というキーワードが何度も繰り返されました。口呼吸が続いている限りMFTの効果は限定的になるため、耳鼻科とも連携した対応が必要だという話もありました。

また、舌のなかでも特に奥の部分(舌根部)が上あごと接触すると、鼻と口の空気の通り道が分離されて鼻呼吸が成立する、という視点は目から鱗でした。この視点は、私が24年前に受講したZickefooseのコースでは言われてなかったことかと思います。

このスライドは私に、非常に多くの気づきを与えてくれました!

録音・録画の活用——続けるための最強ツール

講習会では「録音が成功への鍵」となることを強調されていました。患者さんが自宅で練習するとき、自己流だとつい楽な誤った動作になってしまいます。録音を聞きながら練習することで、診療室でのシーンがフラッシュバックし、正しいリズムと動作を再現しやすくなる、というわけです。

録画も同様に強力なツールです。前回との比較で変化を「見える化」することが、患者さんのモチベーションに直結します。「練習したから」ではなく「これだけ良くなったから」という、動画による客観的な根拠があってこそ、機能訓練の意味が見えてきます。訓練終了から10年以上経っても「戻りたくないから今でも続けている」と語る患者さんの実例は、とても心に響きました。

食いしばり・TCHと矯正治療の深い関係

食いしばりやTCH(歯牙接触癖:無意識に上下の歯が触れている状態)が矯正治療に与える影響についても、具体的な話がありました。ワイヤーが変形したり、ゴムをかけても歯が動かない「ゴム負け」状態になったり——矯正治療が思うように進まない場合、食いしばりが原因になっているという状況は、日常臨床でよく起こります。

高橋先生ご夫妻のクリニックでは、上下の歯が接触している時間は1日1時間以内と説明しているそうです。食事や発音の瞬間以外は、歯はそっと離れているのが正しい状態——これ、意外と知られていないポイントなんです。このあたりについては私も過去のブログでも説明していますので、ぜひご一読ください。

講習会では、食いしばりが改善されると顔が痩せて見えたり、姿勢が改善されて目の印象まで変わるという話も紹介されていました。17年後も意識を続けて顔の歪みが改善し続けた症例も紹介され、MFTの長期的な効果を実感することができました。

楽しく、そして根気強く

「楽しく練習する」というメッセージも、多くの場面で感じ取ることができました。指示通りにやらされているのではなく、主体的に取り組む姿勢を育てることがMFT指導の核心だと気づかされました。

子どもの指導では「できないことを指摘するのではなく、できたことを見つけて褒める」というアプローチがなされていました。本人がやりたいと思えるまで待つ選択肢も大切にする——患者との信頼関係に重点を置く姿勢には、非常に共感できました。

さらには「難しい患者さんほど心に残る。根気強く、ネチネチやっていくのは楽しい。」という未哉子先生の言葉には、難症例にも取り組まれるご夫婦の崇高な臨床姿勢を実感することができました。

Zickefoose先生の意志を受け継いで——私の今の想い

日本でのMFT講習会は1981年にZickefooseご夫妻によってスタートし、2018年まで37年間にわたって続けられてきました。Zickefoose先生がご夫婦共に亡くなられた後、その遺志を受け継ぐ形で開催されたのが今回の講習会といえます。

2日間を通じて相互実習の時間がたっぷり確保され、受講生同士が実際に体感しながら学べる充実した内容でした。MFTの指導・普及に長年貢献されてきた歯科衛生士の方々がインストラクターとしてテーブルをまわってくださったことで、細かく質問もできて非常にわかりやすかったです。

近年ではMFTは矯正歯科の分野を越えて、小児歯科や医科の耳鼻科でもその必要性が認識されるようになってきました。高橋先生ご夫妻の講習会は数年前には台湾でも行われ、関連書籍数冊が台湾語に翻訳されて出版されています。

Zickefoose先生ご夫妻の講習会を最初に企画した山口秀晴先生と大野粛英先生も、今回の講習会に同席されていました。恩師の山口先生とお話させていただいたところ、アメリカで筋機能療法士として開業されていたZickefooseご夫妻のやり方と、日本の歯科医師と歯科衛生士である高橋ご夫妻のやり方とは、資格が異なる点で別の進化を遂げ、今や日本式のMFTが世界に広まりつつあるとの認識を示されていました。

私の恩師の山口秀晴先生(右)と大野粛英先生と橋本律子MFT学会広報委員長のなんとお三人方から、ご著書にサインをいたいてしましました!(この本も台湾語に翻訳されています)

私もMFT学会広報理事として、この分野が持つ可能性を、これからも丁寧にそして力強く、伝え続けていきたいと思っています。

おわりに

「口腔機能」というと難しく聞こえるかもしれませんが、要は「口の使い方」です。鼻呼吸をして、舌を正しい位置に置いて、歯はそっと離す——この習慣が、咀嚼・嚥下・発音・姿勢、そして顔の印象まで変えていく可能性を持っています。

みなさまにもぜひ、こういった視点を頭の片隅に置いておいていただけたらと思います。そして、もし「自分の口の使い方、少し気になるかも」と感じた方がいれば、ぜひ一度ご相談ください。