矯正歯科を選ぶとき、皆さんは何を基準に歯科医院を探しますか?

通いやすさ、費用、装置の種類、治療期間、院内の雰囲気。最近では、Instagramやホームページの症例写真を見て決める方も多いと思います。

もちろん、どれも大切な判断材料です。

しかし、矯正治療を受けるうえで、もう一つ知っておいていただきたいことがあります。

それは、担当する歯科医師が「矯正歯科について、どのような教育と研修を受けてきたのか」という点です。

アルファ矯正歯科クリニックでは、患者さんの治療結果に責任を持つことを何より大切にしています。その姿勢をさらに明確にするため、私たちは現在、日本歯科専門医機構が認定する「矯正歯科専門医」の取得を目指して準備を進めています。

今回は、矯正歯科の資格の違いや、なぜ私たちが今あらためて専門医を目指すのかについて、一般の方にもわかりやすくお話ししたいと思います。

アルファ矯正歯科クリニックの歯科医師は「認定医」です

アルファ矯正歯科クリニックの歯科医師は理事長をはじめ、日本矯正歯科学会の「認定医」資格を取得しています。

「認定医」と聞いても、どのくらいの資格なのか、一般の方には少しわかりにくいかもしれません。

日本矯正歯科学会の認定医になるためには、歯科医師免許を持っているだけでは足りません。

学会が認めた研修施設で矯正歯科の基本研修を修了し、その期間を含めて5年以上にわたる臨床研修を積むこと、学会の正会員として5年以上在籍すること、矯正歯科臨床に関連する筆頭論文を発表すること、さらに症例審査などによって知識と臨床技能の評価を受けることが求められます。

日本矯正歯科学会認定医を目指し、5年以上の研修や論文発表、症例審査の道を進む研修医のイラスト

認定研修施設の中心は歯科大学や大学歯学部の矯正歯科です。認定医の多くが大学病院の矯正科医局などで、体系的な教育と臨床研修を受けています。

当院の歯科医師も、大学病院の矯正歯科で専門的な研修を積んできました。

つまり認定医は、歯科医師になった後に矯正歯科のスペシャリストとして歩む道を選び、どれほど早くても5年以上の研修を重ねなければ取得できない資格です。

歯を動かす方法だけを学ぶのではありません。

歯や顎の成長発育、骨格、噛み合わせ、口腔機能、エックス線写真やセファロの分析、治療計画の立案、装置の選択、治療中のトラブルへの対応、治療後の安定性まで、矯正治療に必要な知識と技術を段階的に身につけていきます。

認定医資格は、そうした研修を受け、一定の審査を通過したことを示すものです。資格があるだけで、すべての治療が必ず成功するという意味ではありませんが、患者さんが歯科医師の研修歴を判断するうえで、一つの重要な目安になると考えています。

マウスピース矯正の普及が変えたもの

近年、透明なマウスピース型の矯正装置が急速に普及しました。

装置が目立ちにくく、食事や歯磨きの際に取り外せることは、患者さんにとって大きなメリットです。デジタル技術の進歩によって、歯の移動をシミュレーションし、以前では難しかった治療を行える場面も増えてきました。

マウスピース型矯正装置が、現代の優れた技術を生かした有用な選択肢であることは間違いありません。当院でも、その特性を理解したうえで多くの治療に使用しています。

一方、その急速な普及には、装置メーカーによる提供体制や積極的な情報発信が大きく関係してきたことも否定できません。

マウスピース型矯正装置は、メーカーに患者さんの資料を送り、デジタル上で治療計画を作成し、装置の製造を依頼する仕組みになっています。そのため、従来のワイヤー矯正と比較すると、矯正歯科の専門的な研修を十分に受けていない歯科医師にとっても導入しやすい面があります。

これは、ただちに「認定医でなければマウスピース矯正をしてはいけない」という意味ではありません。また、認定医ではない歯科医師の治療がすべて不適切だということでもありません。

問題は、装置を患者さんに渡すことと、矯正治療を適切に完了させることは、まったく同じではないという点です。

装置が歯を治すのではありません

デジタル画面上では、歯がきれいに並んでいく動画が表示されます。

しかし、画面の中で歯が動くことと、実際の口の中で同じように歯が動くことは別問題です。

歯は顎の骨の中にあり、歯根の形や骨の厚み、歯周組織の状態、噛む力、舌や口唇の働き、患者さんの装着時間など、さまざまな影響を受けます。シミュレーション通りに動かない歯もあれば、途中で噛み合わせが合わなくなることもあります。

そもそもマウスピース型矯正装置だけで治療できる症例なのか、抜歯が必要なのか、ワイヤー矯正や外科的治療の方が適しているのか。この判断は、メーカーではなく、治療を担当する歯科医師が行わなければなりません。

日本矯正歯科学会も、アライナー型矯正装置による治療では、装置を使用するかどうかの判断、不測の事態への対応、そして治療結果について、術者である歯科医師が責任を負うと示しています。

装置メーカーが作成する治療計画は、あくまで治療を進めるための一つの材料です。

提示された計画が患者さんにとって本当に適切なのかを判断し、必要に応じて修正し、途中経過を評価し、計画通りに進まないときには別の方法へ切り替える。そこまで行って初めて、歯科医師が矯正治療を担当していると言えるのではないでしょうか。

散乱したアライナーに頭を抱える若い研修医と、検査資料を総合的に確認して治療計画を立てる経験豊かな専門医の比較イラスト

最も心配なのは、治せる症例かどうかを十分に判断できないまま装置を渡し、計画通りに進まなくなったときに、治療を立て直す知識や技術、診療体制がないことです。

どれほど精度の高い装置でも、診断と管理を行うのは人です。

私たちは、マウスピース型矯正装置を「誰でも同じ結果を出せる自動治療装置」ではなく、専門的な診断のもとで歯科医師が使いこなす治療手段の一つだと考えています。

認定医なのに、なぜ広告で伝えにくかったのか

日本矯正歯科学会の認定医は、長期間の研修と症例審査を経て取得する資格です。

ところが、医療広告のルール上、学会が独自に認定する資格は、自由に広告できるものではありませんでした。そのため、認定医資格を持っていても、一般の患者さんにその意味や価値が十分伝わりにくい状況が続いてきました。

一方、日本歯科専門医機構が認定する「矯正歯科専門医」は、2024年9月13日付の厚生労働省通知により、広告可能な専門性資格となりました。

ようやく、国民が歯科医師の専門性を判断するための、統一された制度が動き始めたのです。

現在、大学病院の矯正科医局で研修している若い先生方を見ていると、認定医を取得するだけでなく、その先の矯正歯科専門医まで取得することを前提として教育が進められている様子がうかがえます。

これからの時代、矯正歯科を専門に診療する歯科医師にとって、専門医資格は特別な肩書ではなく、患者さんに対して自分の研修歴と専門性を客観的に示すための大切な基準になっていくのだと思います。

資格を取ることが目的ではありません

アルファ矯正歯科クリニックは、矯正歯科を専門とするクリニックとして、長年にわたり地域の患者さんの治療に携わってきました。

私たちはこれまで、目の前の患者さんをきちんと治療することを大切にしてきました。

治療前に十分な検査と診断を行うこと。

患者さんに適した装置を選ぶこと。

予定通りに進んでいるかを確認すること。

問題が起きたときに原因を考え、必要な修正を行うこと。

そして、治療が終わった後の噛み合わせや安定性まで見届けること。

患者さんの治療結果に責任を負うのは、医療従事者として当たり前のことだと考えています。

だからこそ、これまで積み重ねてきた診療を、現在の専門医制度が求める基準に照らして、もう一度客観的に見直すために、専門医取得を目指したいと考えています。

専門医の審査では、研修歴や学術活動、治療した症例の記録、診断、治療方針、治療経過、治療結果、治療後の安定性などが審査されます。筆記試験もあり、専門医として必要な知識が問われます。

決して簡単に取得できる資格ではありません。

それでも挑戦しようと考えたのは、これからも矯正専門クリニックとして患者さんの信頼に応え続けるためです。

新しい装置やデジタル技術を積極的に取り入れながらも、装置任せの治療にはしない。治療方法が変わっても、診断し、判断し、結果に責任を持つという医療の基本は変えない。

その姿勢を形にする一つの方法として、私たちは日本歯科専門医機構認定の矯正歯科専門医を目指したいと考えています。

取得までには準備と審査が必要です。その過程も含めて、より安心して治療を任せていただけるクリニックへ成長していきたいと思っています。

資格はゴールではありません。

患者さんにより良い矯正治療を届けるために、学び続け、治療結果に責任を持ち続けること。その積み重ねこそが、私たちの考える「矯正歯科の専門性」です。